不動産の調査(役所編)

不動産の評価を行う場合、現地調査や資料の確認、所有者への聴聞等の他に、役所での調査は欠かせません。

土地や建物がある場所には、どのような制限や規制があるのか?
そもそも建物は建てられるのか?

不動産の評価にとって、とても重要な情報を役所は提供してくれます。
ただし、役所ごとに情報の調べ方や提供される情報は異なるので注意が必要です。

調べ方のポイント

役所での調査は準備が必要です。実際に不動産の評価をするために行っている手順を説明します。

1 インターネットで事前に調査する

最近は、インターネットに情報を掲載している市町村が増えています。まず、入手できる情報はインターネットで調べておくと、実際に役所で調査する時間を短縮できるほか、窓口で直接聞きたい項目も整理することができます。

2 担当部署を確認する

インターネット上に情報が掲載されていない場合でも、調査したい項目がどの部署で担当しているか調べることができます。横浜市や川崎市といった規模の大きな市役所は、役所機能が複数の建物にまたがっているため、担当部署とその部署の所在地(〇〇ビル〇階など)を事前に確認しておくとスムーズに調査できます。また、建物を担当する部署が土木事務所である場合、市役所から離れていることも多く、注意が必要です。

3 調べたい場所の資料を準備する

調べたい場所の地番、住居表示、地図などの資料を準備します。また建物の場合は、登記事項証明書や建物図面があると、窓口で担当の人に説明しやすくなります。

以上の準備ができたら、実際に役所に調査に行きます。

調査する項目とその調べ方

役所調査が必要な項目とその調べ方を説明します。

1 都市計画に関する情報

まず、評価したい不動産がどのような地域にあるのか調べる必要があります。
その土地は市街化区域にあるのか?用途地域は?建ぺい率は?といった情報が必要です。これらの情報は、「都市計画」というキーワードでまとめられています。

区域区分、用途地域、建ぺい率、容積率、その他規制の有無(高度地域、日影規制、防火地域など)

都市計画に関する情報は、インターネットに掲載している役所が増えています。インターネットでこれらの情報を探すためには、
Googleなどの検索サイトで「〇〇市 都市計画」「〇〇区 都市計画」「〇〇町 都市計画」のようにキーワードを入力して探す必要があります。
インターネット上の情報だけでは判断できない場合は、役所で調査するしかありません。役所によって異なりますが、「都市計画課」が主に担当しています。

神奈川県横浜市:横浜市行政地図情報提供システム
神奈川県川崎市:ガイドマップかわさき
東京都渋谷区:都市計画図等

2 道路に関する情報

評価する不動産に接する道路によって、建築できる建物が制限されます。道路に関する情報は不動産の評価を大きく左右します。道路に関する情報は、一つの部署が担当しているわけではなく、場合によっては役所と場所が離れた土木事務所に行く必要があります。

公道(国道、県道、市道、区道など)か私道か

各役所の「道路管理課」または「道路調査課」(役所によって名称は異なる)で聞く必要があります。また、インターネット上に「認定路線」が掲載されている場合は、その認定路線は役所が管理している道路になるので、〇〇市の認定路線は市道、〇〇区の認定路線は区道になります。

建築基準法道路種別

大きな市町村では、インターネット上に情報が掲載されている場合があります。情報が無い場合は、各役所(土木事務所)の「建築指導課」で調べます。

幅員

市町村によってインターネット上に情報が掲載されている場合があります。情報が無い場合は、各役所の「道路管理課」「道路調査課」などで「道路台帳」や「境界確定図」を入手(有料)します。

3 建物に関する情報

建物を調査する場合、建築計画概要書と検査済証の有無を確認します。検査済証が無い場合、建物は違法建築物の可能性があり、評価する上で減額する可能性があります。

建築計画概要書、検査済証の有無

建築計画概要書は、各役所(土木事務所)の「建築指導課」で入手(有料)します。役所によっては、昭和〇〇年以前の建築計画概要書は保管していない場合があります。検査済証の有無も「建築指導課」で調査します。確認だけする場合は無料で調べてもらえますが、台帳記載証明書という証拠資料をもらう場合は有料になります。

4 その他の情報

上記の他に、下水道管の有無、土壌汚染、埋蔵文化財の有無などを役所で調査します。案内係の方に「〇〇を調査したい」と言うと、担当部署を教えてくれます。
また、上水道管の有無も同様に調べる必要がありますが、役所ではなく水道営業所が管理しているので、場所が異なります。

不動産の調査で疑問が出てきたら、窓口で相談することが重要です。調査の段階で見落としがあると、評価の前提が崩れてしまうので、納得するまで調べる必要があります。