費用が安くなる!? 鑑定評価の種類について

不動産鑑定士の主な仕事は、不動産を鑑定評価をすることです。

この鑑定評価には大きく分けて2つの種類があります。
一つは「不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価」
もう一つは「不動産鑑定評価基準に則らない鑑定評価」です。

この2つについて詳しく説明します。
 

不動産鑑定評価基準とは

不動産鑑定評価基準(以下、「基準」という)は、不動産の鑑定評価をするための拠り所となる統一基準です。不動産鑑定士はこの基準に基づいて不動産を評価します。

この基準には、評価をするためのルールや制約が書かれており、これらの厳密なルールを守った上で鑑定評価するためには、時間と労力が必要になります。

しかし、依頼目的によっては、「短期間で評価して欲しい」「簡易的な評価で十分」という場合も多くあります。

そのため、基準よりもやや制約が緩やかな「価格等調査ガイドライン」がまとめられ、基準上の評価の一部を簡略したり省略したりする鑑定評価ができるようになりました。

不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価

基準に則った鑑定評価を行った場合の成果報告書は、「鑑定評価書」と言います。
その特徴は次のとおりです。

①税務署などの行政機関に資料として提出できる
②金額は高め
③期間が長い

「鑑定評価書」は、フルスペックの報告書です。後で説明する「基準に則らない報告書」と違い、用途の制限はほぼありません。一番の大きな違いは、税務署や裁判所などに資料として提出できる点です。そのため、「同族間・親族間売買のための評価」「相続税のための評価」「賃料改定のための評価」などは「鑑定評価書」が適している場合が多いと言えます。

不動産鑑定評価基準に則らない鑑定評価

基準には則らないものの、価格等調査ガイドラインに則った鑑定評価を行った場合の成果物は、「調査報告書」「意見書」「簡易報告書」などと言います。
決まった名前は無く、鑑定事務所ごとに変わります。「簡易鑑定」としている事務所もありますが、厳密に言うと、基準に則らない鑑定評価は「鑑定」と名前を付けてはいけません。
当事務所では「調査報告書」と言います。

その特徴は次のとおりです。

①用途が限られる
②「鑑定評価書」に比べて低額
③「鑑定評価書」に比べて期間は短い
④評価する条件を付与できる(場合がある)

「調査報告書」は「鑑定評価書」よりもリーズナブルです。
事務所によって異なりますが、「鑑定評価書」と比較して1/2から2/3ほどの費用になります。作成する期間も同様に1/2から2/3程度で済みます。

基準に則らない鑑定評価が適している場合とは

価格等調査ガイドラインには、基準に則った鑑定評価(=鑑定評価書)を行うことを原則とするが、次のような場合は基準に則らない価格等調査(=調査報告書)を行ってもよいとしています。

A 調査価格等が依頼者の内部における使用にとどまる場合。
B 公表・開示・提出される場合でも利用者の判断に大きな影響を与えないと判断される場合
C 調査価格等が公表されない場合ですべての開示・提出先の承諾が得られた場合
D 不動産鑑定評価基準に則ることができない場合
E 不動産鑑定評価基準に則らないことに合理的な理由がある場合

例えば、不動産の取引をするための価格の参考として鑑定評価をする場合は、当事者間でのみ使用すればよいので、「調査報告書」で十分であると考えられます。また、社外の弁護士や会計士に提出する場合でも、その報告書が監査法人内部でのみ利用される場合は「調査報告書」でもよいとされています。

また、「鑑定評価書」は厳密な鑑定評価を目的としているため、評価をする上で柔軟な対応をすることができません。例えば、「対象の土地を保育園として利用するための鑑定評価」「隣の土地が購入できたと仮定した場合の土地の鑑定評価」といった、条件を付与した場合の鑑定評価は「鑑定評価書」を作成することはできませんが、「調査報告書」で対応することができます。

依頼目的を伝えることが重要

「調査報告書」でよいのか、「鑑定評価書」でないといけないのか、判断するのはなかなか難しいと思います。

一つの大きな判断基準は、「税務署等の機関に提出する必要があるかどうか」です。提出する必要がなければ、「調査報告書」で対応できる可能性があります。

事務所によっては簡易的な「調査報告書」などは行っていない場合もありますが、依頼目的をしっかり伝えれば、適した鑑定評価の方法を教えてくれるはずです。

当事務所でも、依頼目的や予算を聞いた上でどちらの鑑定評価が適しているか不動産鑑定士としての意見やアドバイスを伝えています。

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