RPAと士業の関係~実際に導入してわかったこと

「働き方改革」と叫ばれる中、「RPA」という言葉が話題になっています。
「知っているけど、実際には導入できていない」という人も多いのではないでしょうか?

当事務所では実際にRPAを導入してみたので、実際の使用感や、導入する上で難しい点をお伝えしたいと思います。

RPAを導入する

RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、業務の自動化を言います。現時点では、パソコン上の単純作業を自動化することができます。

当事務所で導入したRPAは「UiPath」です。この「UiPath」には教育機関や小規模事業者向けに無償で提供している「UiPath Studio Community Edition」というものがあります。

つまり、一般的な士業の事務所のような小規模事業者は、コストゼロでRPAを使うことができます。この点は、まず使ってみたいと考える人にとって大きなメリットではないでしょうか?

この「UiPath」は、1台(または複数)のパソコンにソフトをインストールして、実際の業務で使えるように設定する必要があります。

RPAを導入するために必要なものは?

RPAを導入する上で欠かせないものは、「ITスキル」です。
この「ITスキル」があればあるほど、PRAをうまく使いこなせることができると思います。

ただし、パソコンを日常から使用していて、エクセル・ワードといった一般的なソフトを使っている人は、最初の一歩を踏み出すことはできます。
特に、エクセルのマクロを使ったことがある人であれば、RPAを使うことに対してハードルは低いでしょう。

ちなみに、導入した自分のITスキルは、「エクセルのマクロをちょっと使える」レベルです。

RPAでできること

エクセルのマクロを使うと、登録した複数のエクセル上の計算や操作が一つのボタンで済ますことができます。

RPAでも同様に、複数の操作を登録しておけば、ボタン一つで解決してくれます。
エクセルのマクロとRPAの違いは、マクロがエクセルの中だけで完結しているのに対し、RPAはエクセル以外のいろいろなソフトやWeb上のサービスも登録して実行することができる点です。

例えば、エクセルで記入したデータを他のソフト(例えばメールソフトなど)に移したり、Web上のデータをエクセルに書き込んだりすることができます。

「UiPath」には、エクセルの「マクロの記録」と同じように、作業を覚えさせる「Recording」機能もあるため、複数の作業も比較的簡単に登録することができます。

RPAの実際の導入事例

不動産鑑定事務所では、不動産を評価するために、評価したい土地の情報をできるだけ集まる必要があります。そこでRPAを使って、次のような作業を自動化してみました。

① Googleマップから情報を取得する
エクセル上に書いた住所について、Googleマップで最寄駅や最寄公共施設までの距離などを自動的に取得し、その取得したデータをエクセル上に書き込む
② Web上の行政データを取得する
例えば横浜市のホームページに記載されている行政情報について、調べたい地域のデータを自動で取得する

一つの物件を調べるのは、それほど長い時間はかかりません。しかし、5件10件と調べるには半日や1日仕事になってしまいます。
RPAを使うことで、これらの長時間の単純作業から解放されるという大きなメリットがあります。

導入する上での注意点

RPAを導入することは、メリットが多いと感じています。ただし、何でも解決してくれる夢の機械ではありません。次に導入して感じた注意すべき点を説明します。

① 設定するのに時間がかかる
RPAに作業を登録して実行しても、最初はなかなか動いてくれません。RPAはプログラミングと同じなので、「バグを修正する」という作業が必要になります。自分のようにITスキルが高くないと、トライ&エラーに多くに時間を費やすことになります。
② 突然動かなくなる
順調にRPAを動かしていても、ある日突然作業を止めてしまうことがあります。理由はさまざまですが、例えば、自動化していたWebのシステムがバージョンアップしていたりすると、RPA側もそれに対応しない限りうまく動いてくれません。また、100件に1件だけの特殊なデータを扱ったりすると、こちらの意に合わせた処理をしてくれないなど、いろいろな不具合が起こります。
③ 判断はできない
RPAは「あるしきい値以上はAへ、それ以外はBへ」のような単純なルールを設定することは可能です。しかし、RPAは単純な作業を代わりにすることが得意であり、複雑な判断にはあまり向いていません。
ただし、近い将来、AIも活用して複雑な判断も可能となると思います。

RPAを導入して感じたこと

RPAをうまく活用できると大幅に作業を短縮することができます。

ただし、どんな作業でもRPAに合うわけではありません。

自動化させたい一連の作業を登録するのに、半日や1日、長いと3日間くらい格闘する必要があります。ようやく完成した自動化作業を使っても、うまくいかなかったり、例外的な作業が多くて結局人間が作業した方が早かったり、使わなかったりすることがあります。

つまり、導入する費用(時間)対効果をよく考えなければ、RPAはうまくいかないと感じました。

どういった作業をRPAで自動化するのか、この点が導入する上で最も重要だと思います。