地代は相場で決まるのか?

地代とは、土地を借りている人が払う賃料のことです。
アパートやマンションを借りて払う「家賃」の土地バージョンのようなものです。

駅前の不動産屋に行けば、その駅近くのアパートの家賃の相場を知ることができます。しかし、地代はそうはいきません。

「今の地代が高いのか安いのか、あるいは適正なのかさっぱりわからない」
と悩んでいる方は多くいるのではないでしょうか?

そこで、地代の相場について説明します。

地代は固定資産税の〇〇倍?

土地の価格が高ければ地代も高く、低ければ地代も低くなります。
そのため、土地の価格によって決まる固定資産税と都市計画税を基準にして、地代の相場はその税額の〇〇倍が相場であると言われることがあります。

インターネット上で調べてみると、

「固定資産税の3倍」
「固定資産税の2~3倍」
「固定資産税・都市計画税の2~3倍」
「固定資産税・都市計画税の5~8倍」
「住宅地の場合、固定資産税・都市計画税の2~3倍」

など、いろいろな意見があります。

どれが正しいのでしょうか?

結論から言うと、地代の相場は固定資産税だけでは分かりません。

固定資産税は、全国一律に公平になるように税額が決まっています。

一方、地代は地主と借地人が個別に設定しているので、
地主と借地人の関係性や、地域性が色濃く反映されます。

実際には、地代の平均が固定資産税・都市計画税の2倍の地域もありますし、7倍以上の地域もあります。

地代はなぜ難しいのか?

地代について書いてきましたが、実は地代は、大きく分けて2種類あります。

「新規地代」・・・新たな土地賃貸借の契約において成立する賃料
「継続地代」・・・土地賃貸借の継続に係る特定の当事者間において成立する賃料

新規地代は、土地を貸す人は1人かもしれませんが、借りる人(候補)は無数にいるはずです。つまり、普通のモノと同じように、「安ければ借りる、高ければ借りない」という市場原理が働きます。

一方、継続地代は、賃貸借契約を継続することが前提になるので、借りる人は当事者のみです。借りる人は、その土地じゃないといいけない理由があります。
つまり、市場原理は働かない特殊な状況の中で決まります。

特に継続地代は、今までの地代や契約内容、契約してからこれまでの経緯など、当事者間の個別的な事情に左右されやすいため、継続地代を決めるのは非常に難しいのです。

地代について悩まれるのは、ほとんどの場合、「継続地代」です。
最初に書いた悩みも「継続地代」に関するものです。

地代に相場はあるのか

このような難しい「継続地代」を少しでも理解するために、いくつかの専門機関が継続地代について統計をとっています。つまり、地代の相場の具体的な数字です。

継続地代の水準(相場)

日税不動産鑑定士会による調査(平成27.1.1時点)

東京23区
住宅地:約326円/㎡
普通商業地:約612円/㎡
高度商業地:約4,331円/㎡

東京都不動産鑑定士協会による調査(平成26年度)

港区
住宅地:299円/㎡
商業地:3,112円/㎡

中央区
住宅地:598円/㎡
商業地:1,104円/㎡

渋谷区
住宅地:393円/㎡
商業地:1,883円/㎡

これらの情報は一部ではありますがインターネットに掲載されており、誰でも見ることが可能です。

また、一般の人は見ることができませんが、神奈川県の継続地代についても同様の調査が行われています。

適正な地代とは?

不動産鑑定士が継続地代を評価するには、4つの手法を使います。

4つの手法の詳しい説明は省きますが、どの手法にも共通している点は、

・今現在払っている地代を必ず考慮すること
・今現在払っている地代に対して高くなる(安くなる)要因や事情を分析すること

つまり、今払っている地代を地主と賃借人の間で決めたときから、
現在にいたるまでに、契約の内容に変更があったり、地主や賃借人の事情が変わったり、周りの地価が急激に変わった、といった要因があれば、地代は今よりも高く(安く)なる可能性があります。

実際の裁判でも、地主と賃借人で地代について争いがある場合、「地代の相場」よりも個人的・地域的な事情を重視する傾向にあります。

「今の地代が高いのか安いのか、あるいは適正なのかさっぱりわからない」
と悩んでいる方は、

「地代の相場」について気にするのと同時に、今現在の賃貸借契約の内容や、契約を結んでから今まで、地代が変わりそうな要因があるか考えてみてください。